事例4:相続まで土地を売却したくない地主の借地権分譲と物納戦略

ある日、当社に建売業者から突然、電話がかかってきました。
"ちょっと借地権の相談に乗ってもらえませんか"とのことでした。
なんでも首を突っ込む私としては、取り敢えず話だけでも聞いてみるかと軽い気持ちで、面談することにしました。

借地権付建物が競売広告されたそうで、入札したいが土地所有者(地主)の許可をもらえないと裁判所に代わりの許可を貰わないといけない:借地非訟事件で、厄介だから権利調整専門に業務を行っている貴社にお願いしたいとのことでした。後に厄介な理由が理解できました。

まあ、"いつもと違う立場で仕事をしてみのもいいか"と二つ返事で引き受けることとしました。
この場合の整理として、地主から底地を譲ってもらう約束を取り付けるか、借地権の再販の約束を貰うかどちらか約束してもらえばいいし、承諾料を一定額支払えば商品化はできるかなと簡単に思っていました。
依頼を受けた時点から入札まで12日間であり、手順を再確認し業務に着手しました。

  1. 所有者確認
  2. 物件調査
  3. 地主と面談交渉
  4. 合意書面締結

簡単に受けてしまいましたが、これだけのことを12日間という短期間でしなければなりませんので一瞬、不安にかられましたが生来の楽天的な性格がそれを一掃しました。
早速、地主へ電話連絡を試みますが、何回連絡してもなかなか繋がりません。やっとの事で本人に繋がりますが、地主も高齢者で要領を得ない感じであり、話がわかる人は同居していないようでえした。地主は対象地近くには在住していない不在地主で、東京に長男が住んでいるらしく、その方と話をすることとなりました。
先ずは、最初の難関突破です。地主と会うまでに物件調査して、方針を決定することにします。
対象地が分筆されていない借地であるのは百も承知でしたが、道路境界(官民)が確定していないばかりか、対象地の範囲を示す境界標もありません。おまけに隣接地には債務者の兄弟が居住しています。承諾を含め、地主には相当な協力を仰がないと商品化は困難な状況であることが判明しました。

さあ、いよいよ地主の長男と面談するときがやってきました。この長男、言うなればお殿様みたいなひとです。他人からの指図は全く受け付けません。
困りました。今回は、時間もないし無理かもしれないとの不安が頭をよぎりました。
「この調子であれば誰も今回は入札されないな。特別売却期間を含めて考えよう」と思い、取り敢えず鉾先を変えて、地主の長男として土地(底地)相続に対する考えをお伺いし、これからの突破口を見出すこととしました。

これが功を奏したのか、よくよく話を聞いてみると、所有財産は殆どが第三者に貸している土地であり、"将来の相続について納税をどうするか"、"財産を分割するのに兄弟ともめないか"など相続に対しては非常に関心が高いことがわかり、時間をかけて相続問題について提案書を提示することになりました。

借地人に対しては、あれだけ高飛車になって一切を受け付けなかったのですが、これをチャンスと捉え、やり方によっては将来の安心を得られる方法であると考え直し、父親を説得してもらうことが出来ました。

この結果、当該地の確定測量を実施して150坪の貸地を約30坪の5区画に分割し、借地権付き戸建て住宅として分譲することとなりました。当該物件が駅から近く、借地権付建物(新築住宅)として所有権よりも安い値段設定ができまたので、建物の基礎工事の段階で完売するという人気物件となりました。
また、地主は"自分が亡くなるまでは底地を売却したくない"との意向を持っていましたので、将来の相続時に納税または財産の分割がし易いように土地の確定測量を実施し(建物引渡時には土地の分筆も出来ていました)、土地賃貸借契約書に相続時に納税に協力する旨(購入または物納に協力すること)を盛りこみ、将来の相続に備えることとしました。

sokochi54.gif
二重負担相続が心配な方はこちら
隈ブログ
加藤ブログ