事例8:地主と借地権者の共同事業による整理

ある地主から自分が所有する貸宅地について相談がありました。ある貸地の地代の支払いが遅れ、これまで合わせると6カ月分が既に滞っているとのことです。地主には顧問弁護士もいて、契約解除、明渡請求も可能のようですが、借地人とは縁戚関係に当たり、出来たら話し合いで解決したい意向が強くありました。

物件の概要

乗降者が比較的多いJR沿線
駅からの距離:250m(徒歩3分)
当該地の賃貸借面積:365m²(約110坪)
建蔽・容積率:80/400
画地:間口12m、奥行25m
地代月額 220,000円

関係者の意向

地 主:収入源として安定且現在以上の収益を確保したい。

借地人:複数の借地人(相続人2人)がいる。
   (兄)借地を活用して事業を行いたい
   (弟)換金化したい。

問題点

  1. 借地権者に相続が発生(相続争い有り)
  2. 地主・借地人共に金銭的な余力がなく、金融機関からの借り入れは困難
  3. 底地と借地権の交換については分割が困難な敷地形状である

方針

当社は第三者への底地と借地権の同時売却または共同事業を行う以外に方法はないと判断いたしました。

合意事項

地主と借地人は以下のとおり、合意しました。

  1. 同時に売却する場合は配分を地主40%、借地人60%とする。
  2. 建築床面積を容積率上限の400%とし、5F建の共同住宅または店舗ビルを建築する。
  3. 土地の時価を3億800万円(280万円/坪)とする。
    (後日地主と借地人の話し合いにより配分割合を路線価割合に拘らず概ね1:2とする)
  4. 建築費用は坪単価80万円、総額3億5200円とする。
  5. 建築業者は地主の指定する業者で行う。

共同事業の実施

結局、地主と借地人は共同事業を行うことで合資しました。
当初の予定では等価交換による区分所有マンションを想定してプランを策定しましたが、事業規模が小さく、採算割れすることが判明し、プランを変更することとなりました。

  • 地主の知人である建築業者によって5F建て店舗・事業所にプラン変更
  • 建築費にかえて1F,2Fを業者が取得
  • 3Fを地主が取得
  • 4,5Fを借地人が取得

その結果、以下のとおりの結末となりました。

  • 地主は月額70万円の収入が得られるようになりました。
  • 借地人(兄)は5Fを居住用として取得しました。
  • 借地人(弟)は4Fを譲渡して換金化しました。

デベロッパーは、一部を事業所として使用し、残りを賃貸して収益を上げることになりました。

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