相続前に確認すべきポイント(生前対策)
底地は所有権の土地と違い、借地人との関係が絡むため、生前に情報を整理しておくことが最大のリスク回避になります。
① 必ず確認すべき項目
- 賃貸借契約書の有無・内容(期間・更新・承諾料・地代)
- 地代と固定資産税の収支
地代<固定資産税なら“負動産化”しています。首都圏の住宅地であれば地代は固定資産税の3~5倍が一般的な水準と言われています。 - 借地人の状況(建物の老朽化・無断増改築の有無)
借地人が高齢単身者の場合には要注意です。将来の相続人の有無、借地人が入院して長期間に空き家になることもありますし、最悪は建物内で孤独死しているケースもあります。従って借地人の緊急連絡先を確認しておくことが肝要です。
② 生前にやっておくと相続が劇的に楽になる方法
- 底地の評価額を把握し、相続税の試算をしておく
「底地の相続税評価額とは」に底地の相続評価を解説していますので、ぜひご確認ください。
- 相続税の試算をしておくと、相続発生後の納税手法の計画ができます。通常、底地を多数保有している場合には納税のための現金が不足しているケースが少なくありません。その場合は底地を借地権者に売却して納税資金を捻出する必要があります。借地権者が購入できない場合には、底地を一括して購入する不動産会社への売却も可能です。
- 借地人に対して意向調査を実施
前記したとおり、相続発生後に底地を購入する意思があるか、借地権と底地を同時売却する意向があるかを事前に借地人に確認することをお勧めします。
相続発生後にやるべき手続き(時系列)
底地相続は「通常の不動産相続+借地人対応」の二本立てになります。以下に時系列に沿って説明をいたします。
STEP1:相続人と相続財産の確定
相続が発生した後に、被相続人の戸籍謄本を取得して法定相続人を調べる必要があります。被相続人が再婚であったり、隠し子がいたりという思わぬ事実が判明することがあります。
並行して相続財産を把握します。地主は複数の不動産がありますので、固定資産税の評価明細書、登記事項証明書で相続財産を確認します。
また預金に関しては、被相続人の銀行口座を確認するとともに口座の出金状況も確認することをお勧めいたします。定期的に資金を引き出して、相続人の口座に入金したり、現金としてタンス預金をしていないかを確認することが重要です。将来、税務調査があった場合には調査の対象になる可能性があります。
STEP2:遺産分割協議案の策定
相続財産の把握及び評価が終了した後に遺産分割のプランを策定します。その際、生前に行った借地権者の意向調査が有効となります。相続人の意向とマッチングさせて遺産分割案を作成します。
底地を保有したい相続人、なるべく現金を相続した相続人などがいますので、換金化できる底地、換金化が難しい底地、換金化の判断が難しい底地などを夫々の相続人の意向に沿って組み合わせていきます。
その際、底地の収益率を見てバランスの良い分割案を策定することが肝要です。また、底地の分割案が出来た後に、各相続人事の相続税を算定し、納税に見合った現預金の分割案を策定します。
STEP3:底地の分筆と相続登記
底地が借地権毎に分筆されている場合には、底地毎に相続登記を行います。底地が分筆登記されていない場合には、底地の分筆登記をします。借地権者に対して、相続が発生したことを連絡し、分筆登記の協力を仰ぎます。底地の分筆は経験のある測量事務所に依頼することが肝要です。借地境界は元々境界標がない場合も多く、塀や建物が越境していることも日常茶飯事であり、借地権者同士の諍いに地主が巻き込まれることも少なくありません。従って底地の分筆登記は時間がかかることが多いため、底地の売却資金で相続税の納税資金を捻出する場合には、納税期限に間に合わなくなるというリスクも発生します。
底地の分筆登記は可能な限り、被相続人の生前に行っておくことをお勧めいたします。
STEP4:借地権者への通知及び相続税納税資金の調達
相続により、貸主が代わったことを通知します。賃貸借契約書を作成し直すこともありますが、
覚書を作成し、貸主と借主が署名捺印を行うことで対処する方法もあります。その際、地代の振込口座を明記することも重要です。
相続税納税のために底地を借地権者に売却する、または底地と借地権を第三者に売却する、もしくは底地と借地権を交換した後の所有権を第三者に売却するなどの手法を実行することがあります。相続税の納税期限は相続発生後の10か月と大変短いので、底地の売却のタイミングが遅れると納税期限に間に合わなくなる可能性があります。その場合には、他の所有権の土地(自宅等)を抵当に入れて、納税資金を調達する必要があります。
延納や底地の物納という手法もありますが、いずれの場合も「金銭納付を困難とする理由書」(相続税延納・物納申請用)
を税務署に提出する必要があります。物納は制度としては残っていますが、実際に利用できる可能性はかなり低くなります。
延納制度は「相続税を一括で払えない場合に、担保を提供して年賦払いを認める制度」です。
延納税額+利子税に見合う担保の提供が必要です。※延納税額100万円以下かつ延納期間3年以下なら担保不要です。納期限までに延納申請書+担保書類を提出する必要があります。
延納期間は、5年〜20年(財産構成により変動します)で、延納中は利子税が発生します。
利子率は、国税庁の最新告示による「延納特例基準割合=0.9%」を基に計算された 特例割合 が適用されます。
下記の表は令和7年1月1日現在の「延納特例基準割合」0.9パーセントで計算しています。
| 区分 | 延納期間 | 利子税(年率) | 特例割合 (実際に適用 される利率) |
|---|---|---|---|
| 不動産割合75%以上(動産部分) | 10年 | 5.4% | 0.6% |
| 不動産割合75%以上(不動産部分) | 20年 | 3.6% | 0.4% |
| 森林計画立木20%以上 | 20年 | 1.2% | 0.1% |
| 不動産割合50~75%(動産) | 10年 | 5.4% | 0.6% |
| 不動産割合50~75%(不動産) | 15年 | 3.6% | 0.4% |
| 不動産割合50%未満(一般) | 5年 | 6.0% | 0.7% |
| 特別緑地保全地区等 | 5年 | 4.2% | 0.5% |
| 森林計画立木20%以上 | 5年 | 1.2% | 0.1% |
御覧のとおり、現在の延納利率は 0.1〜0.7% と極めて低い水準にありますが、実際の延納の利用は減
少しています。
また、底地を担保提供することは、ハードルが高いです。延納税額が大きい場合、底地だけでは担保価
値が不足し、 追加担保(預金・有価証券・他の土地)を求められるケースが多いです。
借地契約の内容次第で底地の担保評価は、大きく変動します。地代が極端に低い、更新料の取り決めが
曖昧、契約書の形式が古いなどの場合は、税務署が担保価値を低く評価することがあります。
底地の担保提供書類として、借地契約書、地代の支払状況、更新契約の履歴などを求められます。
STEP5:相続税の申告と納税
相続発生後10か月以内に相続税の申告をし、納税を完了させる必要があります。前記した延納を利
用する場合には、申告書に加えて延納の申請書を提出する必要があります。
相続税は各相続人毎に納税をしますが、自身が納税を完了しても他の相続人が滞納している場合に
は、税務署から請求が来る可能性があります。それを相続税の連帯納付義務と言います。この制度は
「同じ被相続人の財産を分けた以上、その税金も関係者全体で責任を持つべき」という考え方に基づい
ており、相続税法34条に記載されています。
ただし、負担額は無制限ではなく上限(受けた利益)が設定され、以下の計算式で示された額となりま
す。
受けた利益=相続で取得した財産の価額 −(債務控除+その財産に係る相続税+登録免許税)
STEP6:相続税申告後の3年以内
相続税申告と納税を完了した後に、底地に変化が生じることがあります。借地権者に相続が発生したことにより、借地権の買い取りを求められたり、底地の売却を求められたり、底地と借地権の同時売却を求められたりします。
どう対処すべきかは、ケースバイケースとなりますが、相続税申告後期限後の3年以内に底地の売却をした場合には、特典があります。
底地を売却すると、譲渡税が発生します。譲渡益に対して所得税15%、住民税5%が課税されます。底地を相続した地主は相続税を支払って底地を取得したにも関わらず、また税金を支払うのか、といった厭戦気分に浸ることになります。いわば税金の二重取りといった形になります。そのため、国税庁は「取得費加算の特例」という制度を設けています。
底地を譲渡した際の譲渡益は以下の計算式で算出します。
売却価格-必要経費(仲介手数料・印紙代・測量費等)-取得価格 ①
取得価格とは文字通り底地を購入した価格です。通常は何代も前の先祖から底地が承継されていることが多いため、取得価格が不明ということになります。その場合の取得価格(取得費)は売却価格の5%とみなすというルールがあります。
「取得費加算の特例」とは、相続した財産(不動産・株式など)を “相続開始から3年10か月以内” に売却した場合に、その財産に対応する相続税額の一部を「取得費」に上乗せできる制度です。
以下の計算式で求めます。
取得費加算額=相続税額×(譲渡した不動産の相続税評価額÷相続した財産全体の相続税評価額) ②
仮に相続税額が6000万円、譲渡した不動産の相続税評価額が8,000万円、相続した財産全体の相続税評価額が2億円だとします。
取得費加算額は2400万円となります。この価格が前記の譲渡益の計算式①の取得価格に加算できます。譲渡税(所得税+住民税)が480万円(2400万円×20%)軽減されるわけです。
まとめ
上記の業務を円滑に遂行するには経験と知識が必要です。後者はAIやネットを活用すれば以前よりも容易に取得できるようになりました。しかし、相続人や借地権者生身の人間です。相手の要望や本心をつかむことはAIではできません。数多くの経験を積んで初めて取得できると思います。当方は底地、借地権のコンサルティング歴を40年積み重ねております。
底地の相続(事前及び事後)にお困りの方はまずは当方までご一報ください。
