物納制度の改正

底地(貸地)を相続税の納税財産としたい場合には、物納もしくは売却によって現金で納付するという手法が考えられます。平成18年以前はとりあえず底地を物納申請しておき、借地人と交渉して売れたら申請を取り下げして現金で納付する、売却できなかったら物納条件を整備して、時間をかけて収納に漕ぎ着けるという手法をとることが一般的でした。
 ところが平成18年の延納・物納制度の改正(平成18年4月1日以後の相続開始分)により、上記のいずれの手法もとることが困難になりました。

平成18年の主な改正事項は以下のとおりです。
(1)審査期間の制定
改正前は物納申請に関する許可や却下の期間が定められていませんでしたが、改正後には物納申請書の提出期限から3ヶ月以内に許可または却下されることになりました。改正前は諾否に関してかなり時間がかかっていましたので、かなりスピーディになったと言えます。

(2)利子税の納付
 改正前は物納申請した財産が納付される(収納される)までの期間の利子税がかかりませんでした。しかし、改正後は申請してから収納されるまでの期間もしくは却下されるまでの期間の利子税が課されることになりました。ちなみに平成23年(1月1日~12月31日)の利子税は平成22年11月30日現在の基準割引率(従来の「公定歩合」)に、年4%の割合を加えた率(0.1%未満切り捨て)で計算され、4.3%となっています。

(3)管理処分不適格財産及び物納劣後財産の明確化
物納に充てることのできない財産(管理処分不適格財産)と物納適格財産がない場合に限り物納が認められる財産(物納劣後財産)が明確化されました。具体的には前者は、抵当権が付いている不動産や敷地の境界が明確になっていない土地などで、後者は市街化調整区域内にある土地や無道路地などです。

(4)特定物納制度の創設
 延納の許可を受けた者が、延納期間中に資力を喪失した等の理由により延納を継続することが困難となった場合には、一定の要件により延納から物納への変更することができることとなりました。これを特定物納制度といいます。ただし、相続税の申告期限から10年以内に申告しなければならないという条件があります。

(5)物納の再申請
 物納申請した財産が却下された場合には、却下された財産に代えて1回に限り、他の財産による物納の再申請を行うことができます。また、一定の条件を満たせば、物納から延納に変更することができます。